1,2巻読了。続きが楽しみ。『キノの旅』っぽくキャッチフレーズをつけるなら
「世界はくだらない。そしてそれ故に、楽しい」
魔王を倒した後の勇者一行の話。魔法使いのエルフにフォーカスして、後日譚が描かれる。
『先代の勇者のパーティの1人が、次代の勇者のパーティとして戦う』って設定だけなら、RPGでたまに見かける設定だと思うのだけど、その立ち位置にあるキャラの心情を掘り下げた作品になっていた。話の掘り下げ方に新鮮味を感じた。
着眼点が目新しいし、旅の目的が『xxxとの対話』であること、話の流れとしては『過去を遡っていくような構成』になっていたり、オリジナリティが高く感じる。
『魔王討伐した勇者たちのアフターストーリー(後日譚)』ってキャッチコピーに『lv1魔王とワンルーム勇者』が頭によぎったのだけど、特に被る要素はなく、だいぶ違った。同じファンタジー作品&スタート地点でも、こうも違う作品になるのかという驚き。まだまだ人が新しいものを生み出す余地は溢れているんだなと感心した。
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『人は死んでも、その想いは人や人以外にさえも受け継がれ、形を変えて生き続ける』
という考え方が根底に流れていて、読んでいて心地よかった。作者の死生観や価値観に近いものを感じる。
ジャンルは違うものの 『NieR: Automata』や、映画『オートマタ』のエンディングの先を描いた作品と見ることができないでもない。もしくは、『少女終末旅行』のエンディングの先を描いたら、主人公の心情は同じようなものになるかもしれないと思った。
これらの作品のエンディングの先があるとしたら、『主人公たちはすべてを諦観した上で、ただ幸せな日常が流れる』ように思っていたのだけど、仮に、長く生き残るモノがいたとしたら、こんな風に物事を感じ、思い返すこともあるだろうと、すごく納得した。純粋なファンタジー作品なんだけど、登場人物たちの心の機微がリアル。
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一巻だけだと、主人公のエルフは、『へうげもの』の主人公みたく数寄者なのかなと思ったのだけど、話が進むにつれ、もっと人間的な理由で動いていることが明らかになってきて、話に深みが増した感がある。
弟子のサポートや気付きによって、もともと感情の変化が乏しかった(と思しき)主人公が、徐々に感情を発露させていったり、他者の感情の機微に気付き出す流れは、ヴァイオレット・エヴァーガーデンぽいとも思った。
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葬送のフリーレン。いろんな視点から切り取って眺めることができる、っていう点が実に良い。
物語として一本の筋が通ってる上でなお、多様な見方ができるというのは、良作の素地があるんじゃなかろうか。