体系的かつ網羅的にコーヒー豆に関する情報がまとめられていて、とても勉強になった。かなりの良書にも関わらず、Prime会員なら無料で読めるのでコーヒーに興味ある人にはオススメ。
今まで断片的に集めてきたコーヒー豆に関する知識が、頭の中でいっきに整理されてまとまった感覚を得た。
本の内容(概要)
- コーヒー豆に関する知識
- 栽培、精製
- 品種、グレード
- 流通、焙煎
- 淹れ方
- 豆の挽き方、淹れ方
- アイスコーヒー、エスプレッソなど
- アレンジコーヒー
- 各種作り方
- コーヒー豆の深淵へ
- ブレンドに関する基礎知識、方法
- カッピングに関する基礎知識
- 開業について
- 資格、協議会について
- コーヒーと文化
- コーヒー歴史
- 世界のコーヒー事情
- 産地、コーヒー豆のカタログ(45地域、61銘柄)
ただし、具体的な生産地や農園、コーヒー豆の精製方法の話は限定的でやや物足りない。
とはいえ、コーヒー豆に関する基礎知識から個別具体的な豆の話までが丁寧に1冊の本にまとめられていることを思うと、妥当な分量だと思う。
知ってスッキリしたこと
コーヒー豆の銘柄
コーヒーの銘柄は、ワインほど厳格な命名規則があるわけではないため、品種や国によって表記がまちまち。*1加えて、珈琲豆の「栽培をした国の名前」自体が銘柄になる(品質・味は管理されているけれど、品種は問わない)こともあれば、国の名前の銘柄が特定の品種を示す(栽培した国は異なる場合がある)こともある。
体系的に知識を整理したい場合には、逐一調べて確認する必要がある。
スペシャリティコーヒーの定義
明確には定まっていない。
ざっくりと以下の2つの要件を備えていれば、スペシャリティコーヒーと呼んで良さげ。
- 生産者のトレーサビリティ(だれが、どこで、いつ、作ったか)が確保されていること
- 個性的な風味を有すること(外部の審査で高評価を得ていること)
コーヒー豆の構造について
外側から
- 外皮、果肉
- 「ナチュラル」 では、取り除かずにそのまま乾燥させる。
- 「ウォッシュド」では、 パルパーで取り除く。
- ★ミューシレージ
- パーチメントと果肉との間には、「ミューシレージ」という粘質物が付いている。糖分を含むペクチン層。
- 「ナチュラル」 では、取り除かずにそのまま乾燥させる。(そのため、乾燥中に生豆どうしがくっつかないように、適宜かき混ぜる手間が必要。)
- 「ウォッシュド」では、発酵槽で取り除く
- 内果皮(パーチメント)
- 「ナチュラル」「ウォッシュド」ともに、脱穀機で取り除く。
- 銀皮 (シルバースキン)
- 焙煎の際に「チャフ」となって剥がれ落ちる
- 生豆(種子)
製法別に整理すると
- ナチュラル
- 「外皮」、「果肉」、「ミューシレージ」を取り除かずに、そのまま乾燥
- 「パーチメント」は脱穀機で取り除く
- ウォッシュド
- 「外皮」、「果肉」は、パルパーで取り除く
- 「ミューシレージ」は、発酵槽で洗い落とす
- 乾燥
- 「パーチメント」は脱穀機で取り除く
製法について
「セミウォッシュド」
- ウォッシュドとほぼ同様。工程簡略版?
- ウォッシュドとの違い: 「ミューシレージ」もパルパーで削り落とす
「パルプドナチュラル」(ハニー製法)
- 「外皮」「果肉」をパルパーで取り除いたあと、「ミューシレージ」がついたまま天日乾燥
- ミューシレージをどれくらい残すかで味が変わる(※さらに製法が細分化される。産地により呼称はさまざまらしい。)
- 100%残す: ブラックハニー
- 50%残す: レッドハニー
- 25%残す: イエローハニー
- 15-20%残す: ゴールデンハニー
- 10%残す: ホワイトハニー
「ナチュラル」(ワイニー製法)
- そのまま天日乾燥
「スマトラ式」
- 「外皮」「果肉」をパルパーで取り除いたあと「ミューシレージ」がついたまま天日乾燥し
- 生乾きの状態で脱穀する
- 脱穀後、ふたたび天日乾燥する
コーヒー豆の品種について
大きく分けると以下の3品種の系統に分かれる。
- アラビカ
- カネフォラ(ロブスタ)
- リベリカ
ストレートコーヒー(シングルオリジン)はほぼアラビカ種の系統。
ロブスタ種は、栽培が容易で、インスタントや安価なブレンドに利用されていることが多い。
代表的なアラビカ種の系統に属する品種
品種名は銘柄にも明記されていないことが多く、ほとんど目にすることがない。風味に対して決定的な要因ではない(産地や精製方法、焙煎度合いの方が支配的)ので気にしなくても良い気がする。
- ティピカ
- カウィサリ
- ブルーマウンテン
- コナグアテマラ
- ケント
- ムンドノーボ
- マラゴジーベ
- ブルボン
- カツーラ
- カツアイ
- パープラセンス
- ビジャサルチ
- パーカス
- パカマラ
- フレンチミッション
- SL 28/34
- モカ
- カツーラ
- その他原種に近いもの
- ルメスダン
- ゲイシャ
- ディジャアルゲ
*1:いちおう、全日本コーヒー公正取引協議会のルールがあるので、日本国内ではある程度の規則はあるものの、それでも、使われる名称は国名、地名、品種だったりとまちまち。