キーが壊れたモバイルノートPCに代えてiPad miniを購入した経緯と、iPad miniを紙のメモ帳代わりとしたときの便利さについてのメモ。
iPad mini とApple Pencil を使い始めて半年。
iPadを用いてデジタル化したことで、文字を書く心地良さはそのままに、紙でメモをとっていたときには無かった利便性が生まれた。今まで紙で大量の手書きメモを残していたのだけど、完全にデジタルに移行できた。
購入に至ったきっかけ
中学時代からメモや日誌をPCで残す習慣はついていたものの*1 、大人になってから、アイデアや設計段階での試行錯誤、いうなれば『系統だっていない思考の断片』は、紙で殴り書きするのが、自分にとって『脳内で考えていることをアウトプットする』にあたってフリクションが少ないという結論が導かれてしまい、
ボールペンの種類から、紙の質感までこだわり出し、日々の記録は紙に回帰、そして会社のデスク脇には、日々のメモ用紙が積み上がる、という一見非効率なワークフローが出来上がってしまっていたのだけど、*2、
マイクロソフト Surface Pro 7 / Office H&B 2019 搭載 / 12.3インチ /第10世代 Core-i5 / 8GB / 128GB / プラチナ VDV-00014
- 発売日: 2019/10/23
- メディア:
同じように「モノ」にこだわりを持つ研究者の友人から、『Surface Pro + Surface Pen + OneNoteで仕事の手書きメモを残している』(デジタルペンが実用になる)という話を聞いて、俄然タブレット+ペンの組み合わせに興味が出たのが事の発端で、
紙資料をどうにかするためにも、各種デバイスを比較検討することにした。
比較検討
ちょうどモバイルノートPCのキーボードが壊れて使えなくなっていたこともあり、
『モバイルノートで行っていたことができて、かつ、ペンも使えるもの』
(=モバイルでやりたいことを全て網羅できるもの)
を比較検討してみた。
単に『ペンが使えてキーボードが付いているPC』(いわゆる2in1)であればSurface, iPad以外にもあるのだけど…。紙とペンにこだわりがあるため(紙っぽい書き心地が必須だった)で、
- 「デジタルペンの描画遅延が気にならないレベル」
- 「パームリジェクションが機能する」
- 「ペーパーライクフィルム (種々の紙の質感を再現できる液晶フィルム)が3rdPartyから複数販売されるくらいにエコシステムが出来上がっている」
ことが必要だったので軒並み選択肢からはずれた。
製品名 | サイズ (携帯性) |
資料作成・Web | 出張先・移動中での 開発作業 |
メモ帳代わり (紙のノートの代替) |
Lightroom Classicとの連携 (写真セレクト・現像) |
参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|
Surface Go +Pen +Keyboard |
◎ | ◎ USB PDで充電可 |
○ VisualStudio利用可 |
○ OneNote一択 |
△ Lightroom(Web)が微妙 |
¥90,000~ |
Surface Pro 6 +Pen +Keyboard |
◎ | ❌ 専用アダプタ要 |
○ | ○ | △ | ¥160,000~ |
iPad Mini +Pen +Keyboard |
○ | ◎ | ❌ VisualStudio利用不可 |
◎ アプリが豊富 |
◎ Lightroomアプリが秀逸 |
¥70,000~ |
iPad Air +Pen +Keyboard |
○ | ○ | ❌ | ◎ | ◎ | ¥110,000~ |
iPad Pro 11 +Pen +Keyboard |
○ | △ カバンを選ぶ |
❌ | ◎ | ◎ | ¥110,000~ |
資料作成・Web
Microsoft Officeでの資料作成 (スライドや表、文書など) やメールの読み書きがあるのだけど、iPad OSを使う場合でも、モバイルでのかんたんな資料作りや確認程度であればGoogle Docで代替可能なので問題ないと判断した。
※ iPad OSになってからファイル・フォルダをふつうに扱えるようになったし、Google Docで変換なしに直接Officeファイルの編集も可能になったし、マウスも使えるし、かなりPCライクに使えるようになった。
サイズ 持ち運びのしやすさ
今までの経験から、モバイル用としては個人的に11インチあたりが気軽に持ち出せる境目と判断。(11インチより大きくなると、ある程度のサイズのカバンが必要になり億劫になる。)
また、充電に専用アダプタが必須のものは経験上、可搬性が大きく見劣りするので、USB-C PDアダプタで充電できることは必須。(今まで使っていた11インチのモバイルノートの本体重量が900gだったのだけど、専用アダプタが必要なためにアダプタ込で持ち歩く必要があり、総体積・総重量ともに思いの外、荷物になったため。)
※ ちな、Surfaceは、Surface Pro 7になってUSB-PD充電が可能になった。
メモ帳代わりのアプリ
AppleStoreには評価の良いものだけでもかなりの数があり、WindowsアプリにはOneNoteくらいしかなさげなのは気になったのだけど、友人から『OneNoteがいかに仕事に便利か』を聞き、実際に使ってみて確認できたので、OneNoteだけで十分と判断。
・・・
ここまで比較してみると、Surface Goが、一通りやりたいことをカバーしてはいることはわかったものの、開発で使うにはスペック的な微妙さが…。なにより、今まで11インチのモバイルノートでフルHDの解像度は目に辛かったので、開発に使うには、スペックに加え、画面サイズも微妙と二重につらい感じだなと。
このあたりで考え直し、モバイルで開発する頻度は高くないので、開発作業ができることは要件外とした。
自宅デスクトップPCのLightroom Classicとの連携
おりしも、Lightroom ClassicとLightroomアプリの組み合わせがプッシュされていたのを見て興味がわき、iPhoneでLightroomアプリを試したところ、めちゃくちゃ良かった(撮影から現像するまでの作業効率が大幅に上がった)ので、これは使いたくなった。
最終的に行き着いた結論
- 資料作成/確認ができて
- メモ帳代わりになり
- Lightroomアプリが使えて
その上で
- 持ち歩きが最も苦にならないもの
で選んで、iPad miniとApple Pencilの組み合わせになった。開発用途では使わないのでキーボードはなし(そもそもiPad miniは純正のケース一体型キーボードがなかった…)で良いかなと。
今回、デバイスの選定にやたら時間がかかったのだけど、改めて思うに最初に漠然と『とりあえず、なんでもできるもの』を手に入れようとしたのがよろしくなかったなと思った。
開発に使うのであれば、「ディスプレイサイズ」や「プロセッサの性能」、「物理キーボードの出来」、「拡張性」など重視したい要件が他の用途とは大きく変わってくるので、うまくなかった感。買い物の際は、必要要件と十分条件をちゃんと区別して意識するようにしようと思った。
iPad mini + Apple Pencil + OneNoteの使用感
ハードウェアに関して
液晶フィルムには、低反射(ノングレア)でケント紙のような書き心地のものを選んだ。
エレコム iPad mini (2019) フィルム ペーパーライク ケント紙タイプ (ペン先磨耗防止) 反射防止 TB-A19SFLAPLL
- 発売日: 2019/04/24
- メディア: オフィス用品
このフィルムは、個人的にはかなりアタリ。
(ノングレアコートなので当前ではあるけれど)液晶のキラキラ感が減るのと、指での操作が多少野暮ったくなる、というデメリットはあるものの、ApplePencilでの書き心地は限りなく『普通紙にフリクションボールペン(ペン先0.7mm)で書いたとき』に近くなった。実際の紙に文字を書くときのように、ペン先に抵抗感が生じるのが良い感じ。
・・・
パームリジェクションも完璧に機能するので、気兼ねなく紙同様に文字が書ける。また、OneNoteのページには用紙サイズの概念がないおかかげで、書き足したくなれば好きなだけ書き足していけ、加えて拡大縮小も自由自在なので、紙以上に便利。
iPad OS 13になって第1世代のペンでも遅延が体感でわかるレベルで減って、さらに書き心地が上がった。
Appel Pencil最高すぎる。
アプリに関して
OneNoteを利用。仕事に関しては、クイックノート(起動時に表示されるセクション)に毎日1ページづつ作成して、その日のTODOリストや、その日得た知見、アイデアなどを全て書き込んでいる。また、ノートを複数作れることもあり、趣味のメモ帳も別途作ってる。
また、スキャナを手に入れたので、既存の紙資料は全てスキャンしてOneNoteに取り込んだ。
当初、「せっかくデジタル化したので検索もできるように」と考えて、ラベル・シール付けも検討したのだけど、これは時間がかかりすぎ費用対効果が合わないと判断してやめた。大まかな分類(OneNote上でのセクション)だけ分けて、あとは時系列に、無造作に放り込んでおくだけでも、今までに比べ素早く探せるので必要十分と考えている。
・・・
日々書いたメモは時系列に並べるだけで、OCRにかけないので文字内容での検索不可という雑な管理をしているのだけど、紙資料からOneNoteに切り替えたメリットは大きかった。
- 机に紙がたまらない (机がいつも広い)
- ふだんは筆記用具が不要 (ノート、ペンなど一通り不要に。荷物も軽くなった。)
- どこからでもメモを見返せる (デスクトップ、スマホアプリからも見れる)
- 紙の束から探すより、ずっと楽に探せる (検索性が上がった!)
- 手書きメモに、PCから文字・画像を書き足せる!編集できる! (後述)
と、紙でのメモとは比べ物にならないくらい便利になった。
・・・
iPad に表示したOneNoteと、Windowsアプリ(ストア版がオススメ)のOne Noteとがほぼリアルタイムに同期できるので、
デスクトップPCのディスプレイにOneNoteを表示しっぱなしにしておく*3ことで、手元においたiPad で手書きメモを書きつつ、同じページに、デスクトップPCで表示しているページのコピペやスクリーンショット、加工した画像などを書き加えることができる。
別アプリからのコピペや、画像の取得、加工などはPCで行ったほうが早いので、適宜、状況に応じて入力デバイスを使い分けられるのが便利。
また、メモの規模が大きくなってきたときに、iPad 側では今書いている範囲だけを表示して、デスクトップPCでは、ページの全体像を表示する、といった使い方も便利。
そして、今まで紙ではかんたんに出来なかったことで新たに出来るようになったこととして、PCを使えば、ページの内容を適宜切り貼りしたり、サイズを変えたりして、別のページに貼り付けたりと、手書きメモの再編集・再利用がかんたんにできるようになった。
紙のときには出来なかった便利さがたくさん生じた感。
さいごに
ハード自体も良いのだけど、なにより『ApplePencilを活用するためのエコシステム』が出来上がっているのが、すばらしい感。ユーザー体験が良い(ちゃんと実益のあるシステム)とはこういうことかと勉強になった。
紙のメモ帳の用途以外にも、動画鑑賞やWebでの調べ物、撮った写真のLightroomアプリでのセレクト・現像と、マルチに役立っていて、かなり良い買い物をした感がある。
・・・
必要十分の性能ではあるものの、
毎日高頻度に使っていることもあり、文字を書いては消してを繰り返すので、ペンを裏返すだけで消しゴムが使える&充電の手間いらずの第2世代のApple Pencilを使いたくなってるのと、もっと画面が大きいとさらに便利にメモが取れる(各領域が増える / アプリを同時利用しやすい)なぁと気づいてしまい、買い替えたい感がなくはない。
iPad mini Proが出る世界線(デナサソー)、もしくは、開発作業も含めiPad Proでモバイルは十分って世界線を希望したい。
追記:iPad Air 4th + Apple Pencil 2に買い替えました
*1:中学~高校あたりから『コンピュータという優れた外部記憶装置があるのに、自分の頭で何かを記憶するなんて馬鹿げている』という極端な考えをもっていたため、試行錯誤の上、当時一部ではやっていたchangelog形式でメモを取っていた。ちなみに、当時作りためていたデジタルデータは何度かのHDDクラッシュで紛失した一方、実家の押し入れにある小学生の時の紙のノートが残っているのは皮肉だ…。学生時分にはストレージの信頼性を確保するという観点が抜けていた。
*2:物質的にはかなり無駄が多いのだけど、自分の場合『脳内のイメージを言語化する』ことが仕事の上で最優先事項なので、日々のアイデアやメモをストレスなく残すことを最優先するとこうなった。余談だけど、自分の場合、時系列でなら『いつ何をしたか』を無意識にだいたい覚えているので、日々のメモを書いた日の順で積み上げておくだけで、そこまで検索に困ったことがない。重要なものはデジタル化して別途管理していることもあり、成立していた感。まぁ、とはいえ、改善したいとは常々思っていた。
*3:自分はサブディスプレイのうちの1つをOneNote用に使っている