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タコの心身問題

タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

タコの生態から推測されるタコの脳内の処理についての学術的見地からの解説書。この手の本はなかなか最後までじっくり読みきれないのだけど、この本はくだけた文章で読みやすく、興味深く最後まで読めた。

身近に宇宙人に匹敵する生物がいたのだなぁと、新鮮な驚きを得た。

・・・

以下、読書メモをそのまま残す。

読書メモ(未整理)

4ホワイトノイズから意識へ

感覚と行動の結びつき フィードバック

私たちが次の瞬間何を感じるか 私たちの行動 外界の変化 の2つで決まる

行動 = 世界に影響を与えるための手段 筋肉→一貫した影響をより広い空間に対して与えることが可能に

自らの行動が、自らの感覚に影響を与える →正確に外界を把握するには、外界の変化のうち、自らの行動に起因するものを把握する必要がある = 自分と外界を区別する必要性

認知の分裂 右脳で認識したことが、左脳に伝達されない。 右目で見た情報と、左目で見た情報が統合されないなど

人間にはあまりない。 動物の中では結構いる タコは伝達されるが時間がかかる

経験の統合には、そのための時間と仕組みが必要。 地球上では、進化によって獲得したものと獲得しなかったものがいる

主観的経験はどこからきたのか

新参者説 仮説1 感覚情報が統合され、世界の脳内モデルを持つようになり、時間や自己を認識できるようになって、はじめて主観的経験(=意識?)が持てるようになった

知覚の恒常性 あるものが、見え方が変わっても、同じものであると認識する能力 距離による見え方の変化を脳内で相殺するなどの高度な処理が必要

変容説 主観的経験≠意識 主観的経験のうち、意識的なものを意識と呼ぶことにする 仮説2 痛みのように単純な主観的経験(すぐになんらかの反応を必要とするもの)は、多くの動物が共通して持っている可能性がある。神経系が複雑になることで、大きく変化し意識となった。

人間の主観的経験 知覚と運動の制御が密接に関わる

5 色を作る

コウイカ ジャイアントカトルフィッシュ

視神経は色の知覚ができない モノクロ 皮膚に光を感じる光受容体が備わってる

社会生活の単純さに反し、表現は多彩で、コミュニケーション手段と考えると、謎が多い

6 人の心と他の動物の心

言語は思考のための重要な道具である が、絶対必要というわけではない

人は、内なる声により、複雑な心を持つよう進化した 頭足類は、全く別の道を通じて進化した

7 圧縮された経験

頭足類の寿命は1、2年 にもかかわらず、巨大な脳を持つ

なぜ生物には寿命があるのか(老化するのか) ピーターメダワーの主張 老化(長生きした場合のみ発症する)遺伝子を備えた種が時間をかけて支配的になったため ウィリアムズの主張 早い段階でメリットがあり、遅い段階でデメリットがある遺伝子は、自然淘汰の中で生き残りやすい

一応、進化論で説明が可能

タコは一回繁殖性(例外あり) 制約のない体、 捕食される危険性と、捕食する必要性のふたつが必要 常に危険にさらされるため寿命が短く 神経系が大規模になった理由と考えられる

要約 生物の寿命はライフスタイルにより左右される

8 オクトポリス

どうやってできたのか? 推測 金属片が落ち→巣穴の生成に向くので、その周りに餌の帆立貝を集めてくるようになった→貝殻が集まり、より巣穴向きに→さらに多くの帆立貝が集められることに

機能 巣に近い場所では、天敵から狙われない(模様)

なぜ共食いしないのか? 通常、タコは共食いする。 オクトポリスでは、帆立貝が豊富にあるので共食いしないのではと考えられる

エコシステムエンジニアリングの実例と言える。 ※環境が生物の行動によって変化させられること。 他の生物の行動をも変えている タコは通常よりも社交的に 脳の進化が起きる可能性が見て取れる(なお、種の進化は、より広範囲に何千年にもわたって何かが持続する必要性があるため、現実的にすぐに何かが起きるとは考えられない)

並行する進化 感覚器 外からウチへ情報を取り入れる 運動能力 自分の外の世界にはたらきかけをする 神経系の発達に伴い、感覚器や信号を発する機構のうちの一部は、内向きに行う機構が生じる

複雑な脳を持った頭足類は、共通の複雑な脳を持つ種からの分岐ではなく、もっと原始的な種から何度も細かく枝分かれして現在に至っている

海 魚の乱獲による影響や CO2の増加による海水の酸性化の影響は 看過できない