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FE55mmF1.8を4年間使った感想と、 FE50mmF1.4Zのファーストインプレッション

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ふだん(=雑多な撮影目的で)つかっているレンズの性能に、いくつかの課題を強く感じるようになってきたので、そろそろ買い替えたほうが良いかなぁと思い出した。

以下は、SONY Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA (型番:SEL55F18Z)を4年間使ってきた感想・使っていて感じる性能面での課題と、その課題を解決するための『ふだんつかうレンズの買い替え検討記録』。

追記:2020.6買い替え完了

現状: SONY FE55mmF1.8ZA

使い始めて4年。

良いところも悪いところも、撮影距離によって変わってくるF値ごとの収差の出方も体で覚えて、思うように使えるようになったのだけど、

いまいちな点が気になるというか、撮影の幅がレンズに制限されている気がしてきた*1ので、そろそろ買い替えどきかなという気がしてきた。

とりあえず冷静になって、今まで使ってきて良いと思った点・気になっている点をふりかえってみた。

GOOD:

ポートレート写真に好適

ポートレート写真は、いつでも満足の行く感じに撮れる。

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数m離れた位置にいるこどもを撮る分には、開放から収差も少なく、ばっちりシャープに撮れる。

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開放では、被写体が背景から浮き立つように撮れるし、

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適度に絞れば、背景を取り込みつつ、被写体を強調できるしで、

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かなり特殊だけど、F1.8という明るさのおかげで、照明がない状況下でのスポーツ撮影(ミッドナイトエンデューロ)で活躍した

今に至るまでポートレート写真において不満はない。

風景写真もOK

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遠景は、絞れば周辺までくっきりシャープに撮れる。逆光耐性もあるし、色乗りも悪くないし、特に不満を感じたことはない。

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画角的に風景写真撮影に向いているとは言い難いのだけど…。

バックパック1つで旅に出るときは、持っていくレンズが絞られがちなので、これ1本でオールマイティに使える万能感は気分的にありがたい。(あくまで保険になるくらいの気分的なもので、実際には、事前に風景を撮るつもりの場合は、広角ズームレンズを十中八九持ち出している。)

NOT SO GOOD:

ここからは、『悪くはないんだけど良くもない』という、改善したくなるようないまいちな点、使ってきて感じる課題について。

①テーブルフォト・草花の撮影は不向き

テーブルフォトや庭の草花の撮影には、二重の意味で不向き(できないわけではないけど、より撮影に適したレンズがある)。

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  • 最短撮影距離が長い(=最大撮影倍率が低い)
  • 最短撮影距離あたりでは、開放 ~ F2.8くらいまで色収差がかなり目立つ

最短撮影距離が0.5mとけっこうある(=最大撮影倍率が低い)ので、テーブルフォトなど比較的小さなモノを撮る際は自然と最短撮影距離あたりを多用しており、この欠点が頻繁に目につく…。

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工夫すれば撮れないことはないのだけれど。もともとの撮りたかったものから離れて、レンズに合わせて工夫するのは本末転倒感がある…。

ただ、最近この欠点の解消法を見つけてしまった。

APS-Cモードで使うと、最大撮影倍率が稼げるので、そんなに寄ることなく必要十分に大きく撮れる&寄らずにすむので収差もあまり発生せず気にならない…*2。まさに、寄れない標準レンズから、寄れる中望遠レンズに付け替えた感じ。

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APS-Cモードでも2400万画素ある*3し、EVF上では撮影範囲が全画面表示されるし、AFポイントも十分にあるし、実用上の問題もない…。

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買い換える意義が薄れるくらいには実用になるのだけど、APS-Cモードとフルサイズモードを行き来*4していると、必要ないときにAPS-Cモードで撮影していることがあるので、このテクニックは使わないで済むなら使いたくない感がある。

②シャドウ部の階調に疑問

悪くはないんだけど、今、手に入るFEレンズの中ではベターではあるものの、ベストではない印象。

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アップできる作例が見当たらなかったので、代打。この写真は気にならないレベル。

現像で大幅にシャドウを持ち上げると、目視で黒かった部分(主に、影になっていた部分)が緑や赤に転んでいることがある。

問題になる機会はそう多くないのだけど、めちゃくちゃ晴天のときに、日が照ってる部分と影の部分を含む写真を撮って、真っ暗の影の部分のディテールを視認できるように持ち上げたりするとこの問題が現出する。

ハワイ旅行のときに、この問題が顕著に起きた。

・・・

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このレンズの光学性能が影響しているのかと思っているのだけど、センサの熱ノイズ由来で起きている問題、という可能性はある。

勘違いの可能性があるのだけど、無理やりこじつけるなら、『これが、レンズの性能によるものか、ボディ(センサ)の性能による問題かを明らかにする』ため買い換えるというのは有意義に感じる。

③画角がチョットセマイ

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わざわざ書くまでもなく、製品名に入っている "55mm"という焦点距離を見ればわかる、というかそのままの話なのだけど…、もっともポピュラーな標準レンズ(f=50mm)に比べてチョット狭い。

このチョットだけ狭い、というのは、「屋外」なら、少し後ろに引けば解決する程度の問題なのだけど、「屋内」ではこれ以上引けない、という場面も少なくなく…

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今でも室内での撮影では、

『もうちょっと広く撮れたらなぁ』

と思うことがある。

・・・

感覚的にだけど、50mmのレンズに比べると、被写体を背景から切り出している感覚が強い。

標準レンズよりも、f=70mmくらいの中望遠レンズを使っているときと撮影感覚が似ている。

水平画角にして約4°の差に過ぎないのだけど*5、この差が地味に効いてくる場面に、「屋内」ではたびたび出会う印象。

買い替え候補

『標準ズームレンズ』と、55mF1.8よりも光学性能に関して評価の良い『標準レンズ』とをピックアップしてみた。

・・・

一眼レフを初めて手にしたときから

『ふだんの撮影は標準レンズ1本でまかなう(まかないきれなければ撮らない)』

というスタイルでやってきたこともあり、標準レンズにこだわってしまっていたけど、

歳をとるにつれて、

『大口径の標準ズームレンズが合理的だよなぁ…(撮りたい写真が撮れるなら機材はなんでもいい)』

と考えが変わってきたので、標準ズームレンズについても調べてみた。

買い替え候補まとめ

レンズ 価格 重量 最大径✕長さ
Tamron 28-75mm F/2.8 Di III RXD 7.5万円 550g 73.0×118mm
SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN 11万円 830g 87.8×125mm
SONY FE 24-70mm F2.8 22万円 886g 87.6×136mm
SONY FE 50mm F1.4 15万円 778g 83.5×108mm
SIGMA 50 mm F1.4 DG HSM Art 9万円 910g 85.4×100mm

ざっとPHOTOHITOで撮影写真をざっと見てみた限り、レンズの描写自体は、どの製品も、解像度は必要十分で、色乗りも良い感じ。逆光耐性にも問題はなさそう。

焦点位置とF値の違いによる色収差(特に軸上色収差)の出方の変化が気になるものの、PHOTOHITOの写真を眺めてもよくわからなかった。

今どきのレンズは気にするほどの変化はないのかもしれない。

Tamron 28-75mm F/2.8 Di III RXD

広角側で寄れる、クォーターマクロの標準ズームレンズ。

GOOD:
  • 現状気になる点の①、③が解決する。
  • 比較的、小型軽量
NOT SO GOOD:
  • 開放がF2.8
    • PHOTOHITO の撮影写真を眺めた感じでは、ポートレート写真で、55mmF1.8の開放付近に比べて、背景を削り落とし切れない(開放でもボケ量が少ない)かなぁという印象。
    • 夜間の撮影が今より弱くなる。
Unkown:

②はよくわからない。

SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN

SIGMA 24-70mm F2.8 DGDN Art ソニーEマウント 578657

SIGMA 24-70mm F2.8 DGDN Art ソニーEマウント 578657

  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: エレクトロニクス
 

広角~望遠まで全域で寄れる、クォーターマクロの標準ズームレンズ。

GOOD:
  • 現状気になる点の①、③が解決する。
    • ①については、A036よりも広角~望遠域(全域)で撮影倍率が高くて使いやすそうではある(実用上の違いを感じるほどの差なのかは不明ではある)。
    • ③については、24mm始まりなので、今までiPhone(f=28mm)で撮れなかった写真が撮れるようになる可能性がある。
  • レンズ側面にカスタマイズ可能なボタンがある
    • 瞳AFを割り当てるとポートレート撮影で便利、なのだけど、使っている人のレビューを見るに、押しづらい位置にあるらしい。
    • また、機種によっては、割り当てても動作しない機能があるとか。
NOT SO GOOD:
  • 開放がF2.8
    • ボケ量が物足りないのは同上。
  • 重め。大きい。
Unkown:

②はよくわからない。

SONY 24-70mm F2.8

これを買うならSIGMAの方が良くなかろうか。と最初は思った。

TamronやSIGMAに比べれば、AF-Cでの食いつきが良さそうな気がしないでもない。のだけど、定量的な検証データは見当たらず。ざっと調べてみた限り、SIGMAと比べての有意な差がわからなかった。むしろより小型軽量で、最大撮影倍率が高め、解像度高めのSIGMAの方が優れているのでは…。という第1印象。だったのだけど…

GOOD:
  • 画質面で、最高峰の性能(SIGMAより優れている)
    • 海外の定量的レビューを見ると、SIGMAの方は、歪曲収差、周辺光量落ち、望遠端での軸上色収差、ボケ味(玉ボケ内の模様、口径食)あたりがネックっぽい。

結局、画質面・機能面で妥協したくないなら、SONY の24-70mmに行き着く感じ…。

NOT SO GOOD:
  • 開放がF2.8
    • ボケ量が物足りないのは同上。
  • 重め。大きい。
Unkown:

②はよくわからない。まぁ仮にダメでも、このレンズがダメなら基本的にどうしようもないだろうと諦めはつく。

SONY 50mmF1.4

SONYフラッグシップの標準レンズ。

フルサイズ 50mm F1.4(開放)は、数m先のこどもを撮るとき、中版フィルム(645)の標準レンズ(75mmF2.8)と同レベルに被写界深度が浅くでき、被写体から背景をいい感じに浮き立たせられるので、個人的にポイントが高い。

GOOD:
  • 気になる点の①、②、③が解決する。
    • ②については、確実ではないものの、使用レビューを見る限り55mmより全体的に階調性が良いっぽいので期待。
  • 開放からキレッキレ。
    • 大口径を開放から使えるのは素晴らしい。
  • 撮影写真を見ていると、極めて感覚的なものではあるのだけど、55mmに比べて透明感や艶がある印象を受ける。
NOT SO GOOD:
  • 重め。
    • 55mmに比べて3倍近い重量。ズームレンズと遜色ない重さ。
    • 幸い、ズームレンズに比べて長さは短い(小型ではある)ので、バッグへの収納(=持ち運び)には困らなさそう。

『今より綺麗に撮りたい』という目的を考えると、デメリットとしては許容できるかなと。

SIGMA 50mmF1.4

SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art A014 SONY Eマウント用 フルサイズ対応 ミラーレス専用
 
GOOD:
  • 気になる点の①、③が解決する。
  • 開放からキレッキレ。
    • 同上。
NOT SO GOOD:
  • もっとも重量級。
    • SONYの50mmF1.4に比べて劇的に重いわけではない。
Unkown:

②はよくわからない。どこかのレビューで、暗部の階調はSONYに劣ると見たような気がしないでもない。

結論

現状の気になる点①~③を確実に解消できるのは50mm F1.4。

次点は、SONYの24-70mm。なのだけど、さすがにおいそれと手が出ない価格…、画質面の妥協が少ない(実用上は問題がなさそうに思える)SIGMAの24-70mmはリーズナブルで手が届く範囲。②以外の気になる点を解消でき、それでいて50mmF1.4にない付加価値もある(クォーターマクロで撮影できる)。

が、今まで単焦点でそこまで支障がなく、単焦点の使い勝手(撮影テンポ)が体に染み付いている現状で、ズームレンズに買い換える価値があるだろうか、撮影時の感覚が大きく変わるほうがデメリットが大きくないだろうか。という自問自答の上、ズームレンズはなしに。

・・・

55mmF1.8よりも良いものを、となると50mm F1.4しかないという結論でファイナルアンサー。

FE50mmF1.4への買い替え完了(2020.6)

FE50mm F1.4を購入。ほぼほぼ狙い通りに今までの問題を改善できた。

今までよりもレンズが大きくなるので、本体をしっかりホールドする必要が出るかもと思い、念の為グリップエクステンションを購入。

純正と悩んだ*6のだけど、naimono Labの商品に決めた。

製作者の方(ちょろずやさん)のブログ に商品開発に至る流れが書いてあったので読んでみたところ、純正のグリップエクステンションを使った上で、純正が持つデメリットを克服するために作った商品、とのことで、その考え方(何をデメリットに感じ、どう改善するか)が自分の考えと合致していたのでこれを選んだ。

使ってみると、気持ち持ちやすくなってる気がする。

1ヶ月ほど使ってみて、重量増がほぼなく、つけていないときに比べて利便性も特に落ちないので、『グリップエクステンションを買うかどうかで悩む時間がなくなった』という点では間違いなく買ってよかったかなという感じ。

実用性(ホールドのしやすさ)が改善している実感はない。たしかに小指は置けるけど…、『だから何???』という感じがしている。というのは、『三本指でのホールドに慣れすぎているためかなぁ』という自己分析。

小指が置けないことでカメラのホールド性が落ちている方には、問答無用でおすすめ。純正より機能性が高くて、それでいて安いので誰にでもオススメできる。

・・・

レンズの描写はとにかくクリア、まるで実際の光景をレンズを通さずにそのまま見ている感じで素晴らしいとしかいいようがない。撮影距離、F値によらず収差が徹底的に取り除かれている。

レンズのことを一切気にすることなく、撮りたいものを撮りたいように撮れる。

最短撮影距離近傍では、よく見ると軸上色収差が発生するものの、なぜか拡大して見ない限り気にならない*7

しばらく使ってみて、レンズが物理的に大きいので、FE55mmと同じ感覚でカメラを振り回すとレンズを壁などにぶつけてしまうことに気づいた。

というわけで、レンズが周りのものにぶつからないよう、ストラップでたすきがけしたときにレンズを下を向かせることにした。

naimono Labのエクステンショングリップの下部にはこのためと思われるストラップ穴があるので、ピークデザインのアンカーリンクスを購入。

気軽に持ち運べるようになって、欠点がなくなった感がある。

今できることをやりきった感が得られて、良き哉。

*1:本当は開放で使いたいときでも、色収差のことを考えて絞る(=画作りを妥協する)ときがある

*2:『フルサイズで撮影して、あとでトリミング』でも理屈の上では同じことができるのだけど、この場合、撮影時にEVF上で収差の出方がわからない&AFポイントが適切に当たっているかわからない、という問題がある。

*3:a7RIIIの場合。

*4:カスタマイズで、モード切り替えを下ボタンに割り当てると楽。

*5:フルサイズ f=50mmだと水平画角は約40°、f=55mmだと約36°

*6:純正品でも、中古だと程度の良いものがかなり安い

*7:収差の出方が綺麗なのかなぁという印象は受けるものの、そんなことってあるんだろうか…。謎い。