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『パースがわかれば絵画がわかる』を読んで写真について考えた

書店で平積みさているのを見かけて、なんとなく買ってみた。

遠近法(パース)がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

遠近法(パース)がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

絵画において『遠近法』がどのように表現・利用されているのか、みたいな話。

美術の素養がないこともあり、こういう本を読んで絵画に凝らされた技巧を学べば学ぶほど得るものがあって面白かった。

にしても、レンズ設計といい、中世の頃の人たちが積み上げた技巧や体系立てた学問は完成度が高い、というのか、学ぶことが多くて勉強するのが楽しい。

絵画を写真に置き換えて考えてみた

斜め構図と遠近法

斜めに傾けて撮影する(水平を崩して撮る)のは一般的に良くない、と言われてるけど、いい感じになるときがあるのなんでかなぁと、前々から疑問だったんですよね。

「動きが出る」と言われることもあるんだけど(まぁ実際そう感じることはあるんだけど)、斜め構図をよく見るコスプレイヤーの写真とか、特に動きが出るわけじゃないんだけど、なんか良い感じのがあるのなんでだろうと。

で、これについて自分なりに答えが出た。

斜めかつ(あおり|俯瞰)で撮ると、画面外に消失点が生まれて、水平出しして撮るより空間の広がりが出る場合がある。

という。エウレカ感パない。

色彩による遠近法と自然界の色について

色彩によって人は遠近感を感じることができるという話。

  • 白→赤→オレンジ→黄色→緑→青→黒

の順で遠くに見える。

でこれを知ったうえで自然界を見渡すと、空が青く、海が青緑で、森が緑で、大地が黄であることに驚嘆の意を隠せない。

人の視覚が自然に合わせて造られたのか、偶然の産物なのかは分からないけど。

これを知ってから、普段何気なく見ていたモノが今までより立体感を持って知覚できるのが楽しい。

絵画の表現の変遷から見るこれからの写真表現に起きうる変化

絵画においては、幾何学的な正確を有する『線遠近法』がルネサス以降において廃れ、『より人の視覚や感性に沿う表現技法』が確立していった、という時代の移り変わりがあるようで、

デジタル写真に置き換えると、

『リアルに忠実な色再現』から、記憶色や被写体をより浮き上がらせるための現像技術(いわゆる『記憶色の再現技術』)が確立し始めている、まさに今は、そんな表現が変遷する時期にあるのじゃないだろうか。

その他雑感

レオナルド・ダ・ヴィンチが、絵画の能力に関して神の手と称されていることに対して『厨二病すぎ(プギャー』と思ったら、若き頃の『受胎告知』って作品が、教会に設置されたときに絵画を鑑賞する人の立ち位置からみたときの歪みまで考慮して遠近感を描いてた、と知り吐血した。

人の視覚が、近景と、中景〜遠景とで異なっていて、シームレスに異なる仕組みで知覚した世界を見ているってのは目から鱗だった。

ピカソの絵は、『(人の視覚とは一致しない)遠近法による表現からの脱却』という文脈があるというのも目から鱗。ただエキセントリックなだけの絵じゃなかったのね…とか。

画家ポールセザンヌの『キューピットの石膏像のある静物』が、画面中央の石膏像を境に左右で違う視点からの空間を描いており、見る人に絵の前を動いて2つの視点から鑑賞するよう促す仕組みになっていると知り衝撃を受けた。

見る側に相応の教養を要求してて現代からするとかなりロック。

過去の偉人がなぜ偉人と呼ばれているのか、改めて認識できたことが楽しい。

このシリーズ、あと2冊あるらしい。どちらも写真表現の参考になりそうではある。

色彩がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

色彩がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

構図がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

構図がわかれば絵画がわかる (光文社新書)