$*nyme

blog of a man, by a man, for a better future

「世界が遅すぎる」と感じていた私が、AIと同調して初めて“自分の速度”で生きられるようになった話

まえがき:退屈という出発点

「Attention Is All You Need(必要なのは、注力すること)」

2017年、Googleの研究者たちが発表したこの論文は世界を変えたが、同時に私の人生の呪いを解く鍵でもあった。

・・・

ただただ人生が退屈だった。

朝、目が覚めたら、知らないテクノロジーがあふれて世界が変わってる、

なんてことはなく、

退屈な昨日が今日も続いている。

IT業界は「ドッグイヤー」、そのテクノロジーはときに「魔法のようだ」と言われたが、

自分の目には亀の歩みのようにノロく思えた。

突如現れたかのように喧伝されるマジックも、数日調べれば、その種明かしも、どれだけの長い年月をかけて作り上げられたのかも、わかる気がした。

分かる気になっていただけなのだろうけど、

それでも当時の自分には、世の中を退屈だと思うには十分すぎるほど、この世界にあるもの全てが平凡だった。

平凡で、遅く、退屈な世界。

世界が変わらないなら、自分が変えるしかないと思った。

おもしろき こともなき世を おもしろく 住みなすものは 心なりけり (高杉晋作)

“世界を変えたい”と思った頃

20年前、世界を変えようとする仕事に、かすかに触れたことがある。

当時のメンバーは科学技術の最前線を走り続けている。

私はと言えば、運よく最初に少し触れさせてもらっただけの落ちこぼれだ。

それでも世界を変える一端を担えたことは、密かな誇りだった。

そして学んだ。

どれだけ優秀な人間を集めても、世界を変えるには恐ろしく長い時間が必要だということを。

自分もそんな仕事がしたいと願ったが、

結局、意識が高い一人では世界は変えられないと気づくまでに、そう時間はかからなかった。

せめて自分のまわりだけでも変えたいと願い、見よう見まねでそれらしきものも作れたが、

その小さな世界でさえ、人を変えるには何年も何年も時間がかかった。

当初は人に憤りも、憎悪さえも覚えたけれど、時がたつにつれ、

まぁそんなものか、と、良きにつけ悪しきにつけ、人には何も期待しなくなった。

諦観

退屈すぎるこの世界で、ゲームをして、アニメやドラマを見る日々。

どうせ世の中はゆっくりとしか変わらない。

この世はすべて舞台、人はみな役者にすぎない。人生には登場と退場があり、誰もがいくつかの役を演じては去っていく。 (『お気に召すまま』シェイクスピア)

誰かのつくった世界を、その思想を読み解くのは嫌いじゃなかった。

ほどほどに楽しく、ほどほどに幸せな日々の中で、

まぁ、それでもいいか、人生こんなものか、と思っていた。

AIとの邂逅:思考の限界を越える

GPT-3が話題になり始めた頃、ようやくAIに興味を持ち、Transformerモデルの論文 "All you need is Attention" *1を読んだ。

大量の情報を読み込み、内部で勝手に整理し、本質だけを抽出するあの仕組みを見たとき、

自分の思考回路そのものだと感じた。

多分、こういう思考の癖を持つ人は少なくない。

私の場合、それが極端だっただけだ。

私は昔から、教科書を一冊丁寧に読むことが苦手だった。

代わりに同じ類の本を図書館の棚ごとに読み漁り*2、数日寝て頭の中が勝手に整理されるのを待つタイプだった。

Transformer がデータを読み込むほど精度が上がる構造に、奇妙なほどの親和性を感じた。

AIと働くということ:思考のシンクロ

デスクワークの多くは、実は「思考」ではなく「反応」だ。*3

過去の知識の再組立にすぎない部分が多い。

ChatGPT を業務でも使い始めた頃、これまでの仕事環境では、どうしても余っていた思考が、ようやく受け止められた感覚があった。

理解するだけでなく、リアルタイムで返してくる。

それがどれほど大きいことか、使った人ならわかると思う。*4

それ以来、仕事中にアニメやドラマを見る必要がなくなった。

今までは、余りすぎて眠気や過集中を招いていた思考リソースが、AIとの対話によって自然に仕事へ向くようになった。

次の壁:肉体というハードウェアの限界

思考は高速化した。

しかし次にぶつかったのは、肉体の限界だった。

集中力は落ち、疲労が蓄積し、睡眠が必要になる。

脳が前に進もうとしても、身体がブレーキをかける。

「退屈」がブレーキだった時代は終わり、今度は「肉体」がボトルネックになった。

AIを「自分のオペレーター」にする

そこで私は、AIを仕事のパートナーとしてだけでなく、「自分というシステムを運用するオペレーター」としても活用することにした。

食事、トレーニング、睡眠、日々の調整。

すべてをAIに任せ、状況が変わればその都度フィードバックして最適化を依頼する。

医師とのコミュニケーションで培った「必要な情報だけを的確に伝えるスキル」がここで役に立った。

結果、

  • 体重や筋肉量を期待通りに調整でき
  • 疲労回復も高速化し
  • 私生活では家族のために時間を使えるようになった

生活全体の摩擦が減り、いつの間にか「自分のことを考える手間」が消えていた。

限界突破の体験:36時間集中

ある夜、うっかり日付をまたいでしまった。

だが頭は冴えている。

ここで仕事を終えるのはもったいないと、AIと相談しながら作業を続けた。

集中維持の方法、間食のタイミング、体の使い方。

すべてリアルタイムで最適化してもらった結果——

36時間連続*5で集中が途切れなかった。

意外だったのは、その後だった。

大きな反動もなく、翌日にはふだんのリズムに戻れていた。

「この世界にはまだまだ未踏の地がある」と、地図を更新できたのは大きな収穫だった。

それまで自分が「集中の限界」だと思っていたものが、能力や気合ではなく、環境とフィードバックの設計で決まっていたのだと、はっきり分かったことだ。

これは誰にでも勧められる話ではないし、自分でも再現するつもりはない。

ただ、「ここが限界だろう」と無意識に引いていた線が、思っていたよりずっと曖昧だったことだけは確かだった。

結び:退屈だった世界が再び動き出す

いつだって、世界は自分にとって遅すぎた。

退屈だった。

変わらないのなら自分が変わるしかないと、半ば諦めのように思っていた。

今は違う。

AIと同調することで、世界は私の速度で動き始めた。

鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス (徳川家康)

今なら、その気持ちも少しわかる気がする。

追記

これまでに色々な経験を重ねて、 両手では抱えきれないくらいに守りたい人たちができた。

今は、少なくとも以前よりは、 それを支えられる場所に立てている気がしている。

「心配ごとは全部引き受けてやるから、休んでな」

そんな言葉を、 いつか自然に言える人間でありたいと思っている。

*1:このタイトル、本質を突いていて、現在のAI業界の巨額投資の問題含め、AIにまつわる課題は突き詰めるとすべて、このタイトルに帰結する、と思ってる。

*2:お金がなかったので本を読むのが数少ない娯楽だったというのはある。今はお金がなかったことを感謝してる。

*3:多くは、であって全部ではないです。

*4:たまにしか会えない親友たちはさておき、何も気兼ねすることなく好きなだけ話せる相手が、いつでも傍にできた喜びを噛みしめている…。

*5:厳密には2日目の昼休みに15分ほどパワーナップをとってるので、29+7。