王道を行く良作JRPG。モバイルゲームにおけるAppleArcadeの可能性を感じられる逸品だった。『モバイルゲームとして純粋にゲーム性を突き詰めると本格的なゲームが出来上がる』ことの証左と言っても良いんじゃなかろうか。
Netflixのように『サービスの提供元が広く薄く資金を集めて、良質なオリジナルコンテンツの制作元に対して集中的に支援を行う』タイプのサービスからなら、良質なモバイルゲームが生まれてくる可能性を感じられた。モバイルゲーム開発の1つの形として定着してほしいなと思う。
FANTASIANの感想
古き良きRPG感が楽しい。大画面のテレビに映して遊んだ。
『この作品、しれっとスゴイな』と感じた点として、シナリオ、キャラ、バトル、音楽、映像もろもろの点で、極端に斬新でも極端に古風でもなく、極めて『中庸』という印象を受けた。
その中庸さゆえに、過度にのめり込むこと無しに遊び続けたくなる面白さがある。このバランス感覚は、最前線でFFを作り続けてきた経験の賜物なんじゃなかろうか。流石という他ない。
ジオラマ
そんな全体的に中庸を貫いている中で、背景美術(※ ジオラマの実写データを利用している)は狂気を感じるレベルの完成度だった。
AirPlayで4kの大画面TVに映して遊んでいたのだけど、4kで見て初めて気づくくらい細部まで作り込まれていた。
いや、ほんと、スマホゲームなのに、4kの大画面でつぶさに鑑賞可能ってどういうことなんだろう。主人公が歩いていけない箇所まで作り込まれているし。『オーバークオリティってレベルじゃねぇぞ!』っていう感じでテンション爆上がりだった。好き。
背景がジオラマなので、大画面で見ていると『これは発泡スチロールを巧妙に加工したんだなぁ!』とか『これはもしやダンボールか!?』とか、『こんな細かなところまで作り込まれているのか!?』という新鮮な驚きがあって、妻とワイワイ話しながら散策してるだけで楽しかった。
ディメンジョンバトル
『雑魚戦はまとめてあとで行える』というディメンジョンバトルシステムのアイデアが秀逸。無駄(作業)と感じるバトルの機会がぐっと減るので、他のRPGやソシャゲにも実装されて欲しいくらい。
マップを探索したい時は探索だけできて、バトルしたいときにはバトルだけをガッツリ楽しめる。
ゲーム性も少し変わって、アクションゲームっぽくなるので、飽きること無く最後まで楽しめた。
シナリオ
第一部クリア。ヴァムとのバトル、からの怒涛の展開ラッシュがグッときた。
「ここでゲームシステムに追加?!」と嬉しい驚きありで、ストーリーも一気に深みが出てきて続きがめっちゃ気になる。
スタッフロールを眺めながら、クオリティの高さに敬意と感謝の念を抱いた。めっちゃ良かった…。
第2部が楽しみ。
バトルの難易度
ボス戦が実に絶妙で、無駄にレベル上げすることもなく、装備品や戦略・戦術を工夫することで有利にバトルを進められるように練られていた。
適度に爽快感や達成感が得られて、良かった。
細かな点
坂口氏が関わったFF過去作のオマージュのようなものが織り込まれていたり、ちょっとした遊びゴコロが感じられたりと、細かな楽しみが散りばめられているのも探索の楽しみになって良かった。
ゲームコントローラへの対応
地味ながら、ゲームコントローラー(Xboxコントローラ)に完全対応していることに感動した。
今まで遊んだ経験だと、モバイルゲームだとコントローラへの対応が限定的な場合が多い(ところどころ、画面タッチしないと操作できない箇所があったり、コントローラでの操作ができるけど快適とは言い難いケースがある)のだけど、最後までコントローラのみで快適に操作できた。
むしろディメンジョンバトルは、コントローラの方が快適な感まである。
これはゲームコントローラーでの操作をしっかりテストして作り込んでいるなと感じられて好印象だった。
坂口氏(FFの生みの親)について
- 作者:週刊ファミ通編集部
- 発売日: 2021/03/04
- メディア: Kindle版
ファミ通のインタビュー記事を読んでいたら、FANTASIANをつくるきっかけは、坂口氏はじめFF6の開発陣で集まってFF6の実況をワイワイやった経験がベースになっているとのことだった。実際、FFシリーズの古き良きところがグッと濃縮されている印象を受けた。
同時期にプレイする友達がいれば、確実にワイワイ楽しめた作品だと思うのだけど、惜しむらくは大人になってしまい同じタイミングで遊べる友人が見つからなかったこと。(みんな生活リズムが異なるので、どうしても時差ができてしまう)。妻と遊べたのでまぁ良いといえばよいのだけど、なんかこうちょっと勿体無い気持ちがある。
坂口氏的に、FF9推しが1つの完成形のようなので、FF9を遊んでみようと思う。
故岩田社長との対談記事
FANTASIAN を契機にミストウォーカー社の作品や坂口氏に興味が湧いて調べていたら、任天堂の故岩田社長との対談記事が見つかった。
坂口氏をはじめ、ゲーム業界の黎明期から開発し続けている大御所の方たちが『何を目指してゲームを作ってきたのか』が伝わってくる、すごく良い記事だった。個人的には、ファミコンの時代からゲームを表現媒体(芸術作品の一種)として捉えられていたことに衝撃を受けた。先見の明が有りすぎて絶句。