
- 発売日: 2018/08/03
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面白すぎるので困る。一気に見てしまった。
目次
シーズン2の概略
ホスト(AI, アンドロイド)内部での分裂はありつつも、シーズン2は、おおむね、AI VS 人間 の構図になっていた。
あ、この記事でいう「AI」はいわゆる人類の長年の夢である汎用AI*1であって、2018現在、現実に存在しているAI技術(特定の目的に特化したAI)*2のことではない。閑話休題。
AIの中でも、人間との調和を図るバーナードと、戦って勝つことを望むドロレスと、で分かれるみたいだけど。その対立は、シーズン3になる模様。(見事なシーズン3への導線になってたなぁ…。)
- シーズン1: 人間の道具として作られたAIに自我が芽生えるまでの物語
- シーズン2: AIが人間の道具から、自立するまでの物語
- シーズン3: 自立したAIが、人間と共生するにいたるまでの物語
だろうか。
大局的には知性の進化を早巻きで見てる感じで面白い。
以下、ネタバレ&考察。超ネタバレ。
ネタバレと考察
人間は決して変わらない単純な10247行のコードなのか
自我に目覚めたAI(ていうか、バーナードの仕業だろこれ。天才過ぎじゃね。)は、ウエストワールド内に、「人間の心を分析する設備」を作り上げていた。という驚きの展開。
現実世界における「ゆりかご」(ウエストワールド内のホストを作成・分析する施設)のコピーになっていて、相似形の2重底になっていた感、というかマトリョーシカ的な仕組みになっていた感が面白い。
実は、AIが、人間の大半を再現可能なレベルで解析し終えていたのだけど、
その中での会話に、パラメータ(シチュエーション)を色々代えてローガン親子(人間)の行動を再現したところ、『ローガン親子の最後の言葉は、常に1つ。複数の可能性が必ずそこで1つに収束する』という事実がわかった、という話があって、その際に、
- バーナード: 『人間は決して変わらない。』
- デロス(システム):(否定も肯定もせず)『自分のコードに従って生きるだけ。』
- デロス(システム):『単純なコードに過ぎなかった。』
という印象深いセリフがあった。
『自立したAIよりも人間のほうがロボット的で、自我に目覚めたAIこそが人間にふさわしい』みたいな話にもとれるのだけど。
(ニーアオートマタの世界観に通じるものを感じる)
・・・
少し話をさかのぼって、デロス(システム)は、「人は、10247行のコード、で表現される」と結論づけていた。
10247は、素数。かつ不足数(正の約数の総和が元の数の2倍より小さい数)。(ただし、素数=かならず不足数)。まぁ、この数字には特に意味はなさそうなのだけど。
これは、『行動の大半』は単純な生存本能で説明できる、って言ってるに過ぎない。
また、ここでいう『行動の大半』というのも、(現実に比べて、「ルール(法や倫理)に縛られず、ルールを破ってもリスクがない」という逆の制約条件がある)ウエストワールド内での行動なので、
このコードで再現できるのは、基本的にはウエストワールド内での人の行動と、行動原理が一致する部分に過ぎないのではという気がする。むろん根源的な欲求に基づいているので、現実でも大部分有効であるとは思うのだけど。
すなわち、システムが作り上げた完璧なコードを持ってしても、現実世界(外の世界)で、人はAIには予測不可能な行動をとる余地が残っている。
そう考えると、10247行のコードを理解したホスト5人が、現実世界で完全無欠の無敵マンになるわけではなく、なにやら一悶着おこしそうだなと思えてきて、シーズン3が待ち遠しくなってきた!
・・・
ま、それはそうと、デロス(システム)いわく
「パークを訪れた客全員を複製した。殆どの客はやわだ。」「もちろん例外もいる。そういう連中は救いようがない。」
とも言っていて、
例外がおる言うてる時点で、人は10247行のコードでは表せないことが自明じゃないっすか!
とツッコみたくなる。
※ 画面に、AI が作り上げたウィリアムが映る。(一瞬意味ワカンネ、ってなったのだけど、この場面は、システム内の領域なので、システムが作った顧客(ウィリアム)のコピー)
続けて、デロス(システム)が
「(そういう連中は)自分で自分の行動を制御できないんだ。」
と。
『中には、ウイルスに侵された(動作中に自己を改変するような)感じの、やべーやつがおるんすわ』というふうにも解釈できるけど、
これ、AI (ホスト)側からはそう見えているという話で、というか、『AIからすれば、そう解釈するしかない』という意味に思える。
ぶっちゃけ「10247行のコードでは正しく説明がつかない=コードは完璧じゃない」と言っているに等しいと思うのだけど…。
・・・・
話は飛ぶのだけど、(ポストクレジットのシーンで)
ウィリアムは「(何を証明したかったのか、との問に)システムに俺の本性はわからないし、選択肢はこの俺にあるってことだ」と言っているのと、
そもそもウィリアムの行動って、S1のときから『人間はAIには理解できない領域があるはずなんじゃーい!それを身をもって証明してやるわーい!!これからは理屈では説明できない(AIに理解できない)行動=無茶苦茶するんじゃーい!!』って感じなので、
その思惑通り、ウィリアムは『AIにとって理解できない対象』なんじゃないの、って感じる。
要するに、ウィリアム = 「ホスト(AI)が再現・理解できないものの象徴」じゃなかろうか。
だからこそ、ポストクレジットのシーン(遠い未来)において、ホストのエミリー(AI)が、ウィリアムを理解しようとして、何万回、何十万回と複製を作り続けてて再現性をテストしている。(これもまた、ウィリアムが、人の生命を理解(掌握)しようとして、ローガンを複製し続けたのと似ている)
そう考えると、ウィリアムのホストが、再現性をテストしていると聞いて、最後に口元が「ニヤッ」っとする理由が納得行く。
生きていたウィリアムの思惑通り、『AIはまだウィリアムを完全に理解(完全なコピーを生成)できていない』とわかったからニヤッとしたんではなかろうか。
って、ところが再現されているってことは、最後のシーンは、遠い未来で、ウィリアムのコピーがついにできた、ってことなのかなぁ??
・・・
話は戻して、ホストこそが人間らしい、という感じの話としては
- フォードの亡霊:『自由なものは、根源的な衝動に疑いを抱き、変えられるものだ。』
- バーナード:『ホストか』
- フォードの亡霊:(否定も肯定もせず)
という会話もあった。
この部分の解釈として、「AIは自由(進化できる)だけど、人間は自由ではない(進化できない)」って解釈もできなくはないけど、
論理的に肯定された文言だけを丁寧に読み解けば、
- AIも、『根源的な衝動に疑いを抱き、変えられる』のなら、進化できる。
- 人間も、『根源的な衝動に疑いを抱き、変えられる』のなら、進化できる。(これは物語中で否定されていない。)
となる。これ、すなわち、
ウエストワールドに限らず、SF作品のメインテーマとしてたびたび上がる
「AIと人間との違いは何か」
という根源的な問いに対して、ウエストワールドという作品では、
AIと人間に明確な境界線はないのだけれど、
『根源的な衝動に疑いを抱き、変えられる』かどうか、すなわち『自由に生きているか、自由に生きていないか』という境界線がある、
という1つの答えを用意したのではないかなと。
ウィリアム生存の謎
ウィリアムが銃の暴発で片腕を失ったあと、どのタイミングでエレベーターを降りて、そのあとどうなったのか(2週間後に瀕死状態で回収されるまでの間、どうなっていたのか)、謎すぎるわ…。
時間 | ドロレス、バーナード | ウィリアム |
---|---|---|
t1 | 鍛冶場の入り口で対峙 | 〃 |
t2 | ウィリアム、銃の暴発で自傷 | |
t3 | ドロレス、バーナード、エレベーターで鍛冶場へ | |
t4 | 怪我の応急処置 | |
t5 ? | エレベーターで降りる | |
t6 | ドロレスにより鍛冶場の水没開始 | |
t7 | バーナードがドロレスを銃殺 | |
t8 | バーナードがエレベータに (中には誰もいない!) |
??? |
t9 | バーナード、ドロレスのパールをもって地上に (ウィリアムはいない!ホストが虐殺されている!) |
??? |
-- | --- 2週間経過 -- | ----- |
t11 | ヘイル姿のドロレス、とバーナードが鍛冶場へ | ??? |
t12 | ヘイル姿のドロレスにより人間全滅 | ??? |
t13 | ヘイル姿のドロレスがバーナードを銃殺 | ??? |
t14 | ヘイル姿のドロレス、バーナードのパールをもって外に | 瀕死の状態で救助される |
-- | ---遠い未来-- | ----- |
tx1 | エレベーターで降りる | |
tx2 | 廃墟に降り立つ |
t9の時点で、エルシーが、バーナードに「ホストよりも、助けるべき命があった」みたいなこと言っていたので、それがウィリアムのことかなぁ。だとしたら、
- この時点(t5?)ではエレベーターで降りてない(遠い未来の時点でのループで降りている)
- 降りようとしたけど、途中で降りれなくなった(何らかのトラブルにあった)
このあと(2週間後に)、ヘイルの姿をしたドロレスが外の世界に出る際、ウィリアムは重症の状態で救助されているので、t5?の段階でエレベーターで降りている気がするのだけどなぁ…。してなかったのかもしれない。
してなかったのなら、なんで遠い未来で、(現実に起きなかった)エレベータで降りる場面を再現テストで行っていたのか謎すぎるので、エレベータで降りるところまでは現実にあったと考えて良さそうな気がするのだけど、決定打に欠ける感。
ポストクレジットの前半と後半の謎
ウエストワールドでは、以下の2つの演出
- 『柱などの障害物で舞台が隠れた次の瞬間、登場人物やシチュエーションは同じだけれども、違う時間(過去や未来)のシーンに切り替わる』
- 『肯定も否定もされていない事柄は、確定ではない。』
が多用されるという特徴がある。
気になる会話
ホストは嘘はつかない(ただし、真実を言わなかったり、視聴者をミスリードさせる曖昧な発言をすることはある)。
- (エミリーのホスト) システムはとっくに無くなっている
- (エミリーのホスト) シミュレーションじゃないわ。ウィリアム。あなたの世界よ。というか、その残り滓。
この会話内容からすると、この時点で、ウエストワールドは廃業(システムもダウン)してる感じ。
気になるシーン
ラストシーンの前半は、降りた先が、鍛冶場の廃墟になっているのは、システムが壊れて(ウエストワールドが崩壊・廃業して)ループが終了したことを意味しているように見える。
(繰り返されるループの途中だけ、をわざわざ映像化する意味があるとは思えない。わざわざ映像化するなら、ループの最後じゃなかろうか。という勝手な推測もある。)
ラストシーンの後半は、前半のループ終了に至るまでに繰り返したループのうちの1つ、ではないかなぁ。
「なんか時間軸違うくね?」と思う根拠はあまり確かなものはないのだけど、
- 撮影されたシーンの色調が変えてあるように思える(前半は暖色寄り、後半は寒色寄り、に感じる)
- ウィリアムの返り血の具合や傷の具合が、なんか違って見える(巧妙にも同じ角度で映っているシーンが見当たらなかったので、単に映像の加工具合でそう見えてるだけかも。同一であると確定できないのが逆に怪しくも思えてくるけど、確証なし。)
- 再現性テストの部屋がきれいすぎる
ウィリアムがドロレスにやられて応急手当をして、「エレベータで降りはじめて」から「鍛冶場につく」までを繰り返しているのでないかなぁ。
ウエストワールド ep.1, ep.2の物語全編にわたってループ説は面白いのだけれど、現実のウエストワールドのスタッフが死亡しているので、全ては繰り返せない。(現実は繰り返せない、が1つのテーマとしてあるので、繰り返せるとなると物語の根幹がゆらぐ気がする。)
繰り返せるとすれば、『ウィリアムがエレベーターで降りてから→エミリーに出会う』までのシーン。
リーの退場について
リーの死亡は、唐突感は否めなかったのだけれど、(単に時間稼ぐだけなら銃下げて降伏で良かったやん、みたいなのはあるのだけど、なんとなく、最後くらい俺だってカッコよくお前たちを守って生き抜いてやるぜ!(俺はホスト側につく人間だ!(てめぇらとは違う))みたいな気概の現れなのかなぁとも思いはした。)
まぁ、そんなことより、ウエストワールドのプロッターが死亡する、っていう事実は
暗に、ホストたちのプロット(決められた筋書き)の消滅(=これからは自由になること)を意味しているのではという気がする。
なぜドロレスはバーナードを射殺したか
ドロレスがバーナードを打つ段階で、ドロレスにとって、バーナードは外の世界で生きていくために必要、ってのは既に認識しているわけで、
初見では、ドロレスの涙・泣き声にミスリードを促された気がする。
(ヘイルの姿をしたドロレス)『私達のままでは外に出られない』( = 私達のまま(の姿)、でなければ、外に出られる、と言っている。)
バーナードを殺したのは、バーナードは生きたままだと、外の世界には持ち出せないので、一旦殺して持ち出せる形(パール)にした、と考えると納得がいく。
自分の中では、ドロレスはわりとツンデレ。(妄想)
参考記事
ネタバレ考察にあたっては、下記の記事を参考にさせていただきました。